
『
あ〜〜お金が、ぬぁ〜〜〜〜い!』
そこは2007年、某所の某ファミリーレストラン。
男が3人。
どこにでもある大学生の普通の会話、嘆き、諦め。
とりとめのない無意味な言葉を宙に投げては、無責任にタバコを吸い、ホットコーヒーでただただ時間を飲み込む・・・。
そう、お金がない大学生ほど虚しい生き物はいないのだ。
キャンパスに溢れるあらゆる幻想を見るのには、それなりのお金が必要で、だから僕ら大学生は普通、その有り余る時間をお金という潤滑油に換えるためにバイトに励み、そしてなんとか大学に馴染もうと油を注す、居場所を作ろうと油を売る。そうやって結構一生懸命に生きている。
だからその日の僕たちも「しかたないんでバイトでも探そーぜ」ってお決まりの結論に至る。
…ファミレスにはそんな大学生が多いのだろう、僕たちの結論を見透かしたように、タウンワークが嫌というほど置いてあった。
そしていつも通り、タウンワークを一人一冊読み始める。
パラパラとページを繰る音を聞いていると、先週も、まったく同じ場所で、全く同じことをしていた自分たちを思い出し、ちょっと気が滅入りつつ、いつもの会話がまた始まる・・・。
ナツメグ『つーかあれだ、今更時給800円で働けないだろ、高校生じゃあるまいし』
サイモンシン『ほんとだよ、週5で働いたらフリーターじゃん!』
ノッポ『このキャンギャルのお姉ちゃん可愛くない?』
その会話はちぐはぐで、そこには何も生まれない、どこにも進まない、そんなお決まりの時間を過ごす。
これがまるっきり僕らの毎日で、ここまではいつもと全く同じ流れだったんだけど、その日がいつもと違ったのは、そこからだった。
ノッポ『そーいえばさー』
ふと、ノッポが何かを思い出したのか、笑いながら話し始めた・・・。
ナツメグ、サイモンシン『なんだよー』
ノッポ『なんか俺の友達が死体ホルマリンに沈める仕事したんだっていっててさ、一日で20万稼げたらしいんだけど、すごくね?』
ナツメグ『なんだよそれ!どーいうことだよ!』
サイモンシン『すげっ!それやろーぜ!!』
ナツメグ『いや、何やんだよ、死体沈めたらダメだろ』
ノッポ『なんかね、病院で死体を保存すんのに、ホルマリンに漬けとくんだけど、浮いてきちゃうから見張ってるんだって。で、24時間ひたすらゲームボーイやりながら、チラチラ死体をみて、浮き上がってきたら棒で沈めてってやってたらしいよ』
ナツメグ『すげーじゃんそれ!死体も見れて20万かよ!』
サイモンシン『15日働いたら300万じゃん!!すげー、それやろうぜ!俺ポケモンまだ持ってるし』
ナツメグ『いや、死体とポケモンってシュールだな、まーいいや、そんで24時間ずっと一緒なの?交代とかないの?』
ノッポ『うーん、なんか24時間で眠らず死体と個室で二人きりだし、ホルマリンの臭いで、1週間くらい体からものすごい臭いを発するらしいよ。交代もないって言ってた』
ナツメグ『本当ならすげーな、どうせ暇だし調べてみようぜ。今すぐその友達に電話だノッポ』
ノッポ『うん、わかった!』・・・・・トゥルルルルー
ノッポ『・・・・・』
ノッポ『うーん出ない!また後でかけよう』
結局、その日、その友達とは連絡が取れず、各々が帰ったらネットで調べよーという事になってその場を後にした。
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後日、飽きも懲りもせず、またもいつものファミレスに僕らはいた。
そして集まるや否や、その衝撃的な話題で、僕らの会話は久しぶりに花咲く。
ナツメグ『つーかあれ、嘘じゃん!』
サイモンシン『ほんとだよ、ホルマリン劇薬だから死ぬって書いてあったぞ!』
ノッポ『誰だよ!ふざけんなよ!!』
ナツメグ『お前だよ!!』
実際、ネット上には
「あれは都市伝説です、ホルマリンは劇薬だから、吸うだけで危ないです」
「死体保存する方法なんて、ほかにいくらでも有るのに、わざわざホルマリンでプール作るか!」
などなど、それらを否定するあらゆる理由が並べられていた・・・。
そして調査結果が僕らにもたらしたことは、この残念な結果と、ある言葉との出会いだった。
そう、その言葉こそが『
裏バイト』であり。
僕らの大学生活を後に変な方向へと導く先導者の名だった。
ネットでホルマリンプールのバイトについて調べてみると、そこには決まって裏バイトという言葉が添えられていて、僕らと裏バイトとの出会いは実に唐突に訪れることとなったのだ。
もしこのレベルの衝撃的な出会いがキャンパス内でもたらされたならば、僕らの大学生活も少しは有益な物になったのかもしれないけれど、残念ながら僕らが出会ったのは、かわいらしい女の子ではなく。怪しい匂いのプンプンするお金のお話だった。
『
運び屋募集、日給6万円!』 とか
『
パソコン打ち込み作業で日給3万』 とか
裏バイトの名の下に、様々な見たこともないおいしい話が転がっていたんだ。
だから僕らは、性懲りも無くその話題で盛り上って、携帯の掲示板からそれぞれが連絡を取ってみて、実際やってみよーということになった。
・・・これが裏バイトサークル結成の物語。
非生産的な日常が裏バイトと混ざり合った結果、化学変化を起こし日。
その結果が僕らにもたらしたものは、
白ロムバイトで騙されそうになったり、
うんこ運んだら騙されたり、
アダルトサイト作ってみたり、
スロットの代打ちで喰ってみたりといった、まーなんか普通の大学生がやりそうなことばかりではある。
それでもこの変化は、僕たちにとってはなかなか刺激的で、怪しい体験と知識、わずかばかりのお金、そしてこのブログをもたらしてくれたんだ。
という訳で
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